誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「あ、あの。あれ、何なんですか?」
あづさがツンツンと鷹の服を引っ張り、奏達と対峙する妖を指差した。
「ん?あぁ、あれな。妖だ」
「・・・・・妖」
「おっと、勘違いするなよ?あれは狂ってやがる。まともな奴の方が多い。・・・たぶん」
自分よりも高位にいる元老院メンバーの顔を思い出し、断言するのが難しくなったのは仕方ないことだ。
鷹は腕を組み、太い木に身をもたれさせかけた。
すると、右横に影が降り立った。
「私みたいに完璧な者はそういないがね・・おっと危ないよ、奏」
「しくじった」
山崎の手元からクナイを抜き去り、目にもとまらぬ速さでファントムの眉間めがけて投げ放った。
しかし、ファントムは腐っても騎士。
必要最低限頭をずらすことで難なく回避してしまった。
奏は軽く舌打ちし、再び目前の敵に向かった。
「あんたも相変わらずだな」
「相変わらず美しいということか?当然だ。私が美しくあることが世の必然なのだから。むしろ、美しくなければそれは私ではない」
「・・・・・こいつのことは頼むから放っておけ」
しらけた目をファントムに浴びせかけ、鷹は視線をそらした。
これ以上話しているとこっちの頭がイカレちまう。
そんなのはまっぴらごめんこうむる。