誠─紅き華は罪人に祝福を与う─



「助かるぜ。俺は今から元老院に戻って後始末を頼んでこなきゃいけないからな」


「分かりました。よろしくお願いします」


「・・・・・・奏のこと、怖がらないでやってくれ」


「・・・あっ!」




ポンとあづさの頭に手を乗せた後、翼を広げ、鷹は夕暮れの空に消えた。




「彼は烏天狗という妖なのですよ」


「烏天狗・・・って、天狗と同じなんですか?」


「私も詳しいことは分かりませんが、似たもの、という解釈であっていると思いますよ?」




この場の状況も忘れ、あづさはほんの少し興奮してしまっていた。


初めて本物の妖を見たのだから、本当は違うが本人はそう思っているのだから、仕方ないといえば仕方ないのかもしれない。




「なぁに?僕が里に行っている間に随分と派手なことやってるじゃない。沖田、邪魔」


「あ、珠樹君!」




珠樹が突然現れ、冷たく最後の言葉を沖田に放った後、自分の名を呼んだあづさに目を向けた。


こんな殺伐とした場所にいるはずのない存在に、スッと目を細めた。




「・・・・・なんで君がここにいるの?」


「私が説明しますよ。ちょうど彼女にも説明しようとしていた所でしたから」


「ふぅん」




腕を組み、珠樹は完全に聞く体勢に入った。


たまにこちらにやってくる妖は珠樹達の元に辿り着く前に珠樹の術によって退けられている。


奏達は相手をするおかげで本当に数はわずかであったのだが。


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