誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「今、雷焔君達が戦っているのはあなたを狙ってきた妖を、言い方は悪いですが、始末するためです」
「始末・・・」
「あなたはご自分の御先祖様のことを何か御存知ですか?」
「御先祖様、ですか?」
「はい」
あずさは心許なさげに瞳を揺らした。
「その様子じゃ知らないみたいだね」
「・・・・うん。よくいる苗字だし」
「それもそうですね。では質問を変えましょう。渡辺綱という人を知っていますか?あるいは源頼光とその四天王は?」
「知ってます!確か、鬼を退治した人達でしたよね?」
歴史大好きなあづさの守備範囲は教科書の域をはるかに超えていた。
そのおかげで説明をいくらかやりやすくしたのは間違いなく重畳だ。
「・・・・・なるほど」
「さすが珠樹君、察しがいいですね。・・・渡辺あづささん、あなたの御先祖様はその四天王の一人、渡辺綱であるようなのです」
「・・・え?えぇっ!」
無理もない。
いきなり思ってもみなかったことを言われた日には、誰しもまずは自分の耳を疑うだろう。
そして、あづさも馬鹿ではない。
自分が置かれた状況をいち早く察知することができていた。