誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「じゃ、じゃあ、私、鬼の人達に恨まれてるんですか?だから、命を・・・」
「そうやって何でもかんでも一括りにしないでくれない?一部の鬼がそうだからって全部の鬼がそうだとは限らないでしょ。これだから人間は。少なくとも、僕と奏はあんたのこと恨んじゃいないよ」
「・・・・え?」
サラリと自分達の正体が人外のソレであることを告げられ、あづさはゆるゆると顔をあげ、珠樹の頭の上を見た。
「ま、僕は人間全般好きじゃないしね。特にこいつらは。・・・・なに?そんなにジロジロと」
「・・・・あ、の。角、とかは?」
「あー、やっぱり思うよな?」
「俺達もさ、最初は勘違いしてたもんな」
「そうそ。角とか牙とかよ、おっそろしいもん想像してたわ」
「こーんなに綺麗なのにね」
「奏に触るな」
どさくさ紛れというかなんというか。
もう妖は一匹残らず片付けていた。
沖田が奏の背に抱き着くのと、珠樹が低く唸るのはほぼ同時だった。
「あれ?珠樹君、帰ってたんだ。もっとゆっくりしてくれば良かったのに」
「あんたこそ、さっさと冥府の門をくぐって成仏したら?そしたら墓に花の一本や二本持って行ってあげるよ。真っ赤な彼岸花をね」
バチバチと青白い火花が二人の目から飛び交う。
奏は呆れたように肩をすくめ、あづさの方を見た。
「二人ともストップ!あづさがショートしてる」
頭に一気に様々な信じがたい事実を叩き込まれたせいか、あづさはボーっとカカシのように突っ立っていた。