誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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奏がここを出て行ってから数時間。
近藤達はいてもたってもいられず、皆が皆、今にも後を追いたい気持ちを抑えていた。
「奏ちゃん、どうして連れて行ってくれなかったんだろう」
「まったく。いい迷惑だよ、御柱なんて」
「珠樹は何か知っているのか?」
珠樹は不機嫌さを隠しもせず、斎藤を斜に見た。
チッと舌打ちし、それでも応える気はあるのか気怠げに口を開いた。
「なりそこないだよ」
「なりそこない?」
「妖になりきれず、さりとてあんた達のように霊体にもなれない。半端な存在。厄介なのは触れたもの全てから力を吸い取る。まるで僕達における鬼切みたいにね」
「じゃあなおさら僕達が行った方がいいんじゃない?」
妖にとって害があるものでも、自分達には関係のないもの。
沖田は立ち上がり、部屋から出て行こうとした。
「総司?」
「・・・・どういうつもり?」
見えない壁に行く手を阻まれ、沖田は珠樹を冷たく見下ろした。
部屋の入口には珠樹によって結界が張られていた。
この場でそれができるのは珠樹と響二人だけだ。
奏はもちろん、追いかけた鷹、鈴、ファントムもおらず、響がこのように邪魔をするはずがない。
珠樹は自らの刀に手を伸ばし
「妖でも人間でもない御柱が、妖だけに害を与えるはずないとは思わないの?あんたら、行ったら魂の消滅だよ。二度と転生はできない」
それを聞いて沖田はぐっと拳を握りしめ、元の位置に座った。