誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
フェルナンドは寸の間考え、その秀麗な面差しを曇らせた。
「ということは・・・・急がなければ」
鷹達の方に向けていた顔を奏の方に戻し、手を傷口にかざした。
みるみるうちに傷口は塞がるものの、その面差しの曇りがとれることはない。
響が奏の額に濡れた布を置いた。
「奏・・・・あの、大丈夫ですよね?」
「・・・・・・・」
「おい、嘘だろ?」
何も言わないフェルナンドに誰もの顔がヒクと引きつった。
「鬼切の時みたいに薬はねぇのか!?」
「落ち着きなよ。あれば使う。当たり前でしょ?」
「んなこと言ったって・・・」
「ここはいつ訪れても賑やかだな」
「お前・・・千早っ!!」
久しぶりに見る幼い子供の姿をした神がひょっこりと姿を現した。
寝かされている奏の姿を見て、色を失っている皆を見て、奏の枕元に腰を下ろした。
「本当に鬼の姫は人間が好きなんだか嫌いなんだか分らぬな。ほれ」
「・・・・・・これは?」
千早が水干の裾をまさぐり取り出したのは小さな包み紙だった。
「鳴神より言付かった神薬。しかし、このままでは使えぬ。これは力のみ回復する。あぁ、一度幕末に鬼切の件で使ったやつだ。熱を取り除かなければ力は暴走するぞ?」
「すぐ戻ります」
フェルナンドは包み紙を握りしめ、部屋に急いで出て行った。
皆の顔に不安は残るもののひとまずは安堵の色が広がった。