誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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奏は元老院の舎館がほぼ一望できる崖に来ていた。


着ている羽織りの袖がひらひらと宙を舞っている。




「奏ちゃん」


「……」




こんなに早くここにいることが見つかるとは思わなかった。


軽く目を見張る奏の横に立ち、下に広がる景色を眺めた。




「………ここ、よく来るんだってね」


「……ナルに聞いたんですか?」


「ううん。レオンさん」


「そうですか。ナルとの秘密の場所なんですけどね。まぁ、レオン様なら仕方ないか」




奏は肩を竦め、崖に腰かけた。


レオンに秘密事を、それも元老院の中で作ろうなんて無理なことだ。




「ここでよく愚痴を聞いてもらってるんですよ。それと、たまにピクニック気分でご飯食べたりとか」


「そう」


「…………」


「あのさ」


「はい?」


「芹沢さんの局長命令って何?」


「…………みんなの生きざまを最期まで見届けること、ですかね。守れなかったですけど」




そう言うと、奏は懐を探った。


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