誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「沖田君、珠樹君。そろそろ時間だよ」
暗闇からレオンと千早が姿を現した。
制限時間はあと数分後だった。
「一人じゃなくなったって、ずっと一緒にいた存在がいなくなれば奏ちゃんは悲しむよ」
「・・・・・・悔しいけどね。事実だから」
「二人とも、聞こえてる?」
「うん」
「聞こえてるよ」
レオンがハァと溜息をつくと、元老院へ繋がる門を開いた。
じきに監守が見回りにやってくる。
見つかれば沖田や珠樹はもちろん、レオンさえもただではすまされない。
それでもレオンはそれ以上急かさなかった。
「僕も奏ちゃんが好き。愛してるんだ。・・・・・君には負けられない」
「奏は僕の半身だから、返してもらうよ」
彼は返事をする代わりに曖昧に笑った。
そして二人は揃って口を開いた。
決して示し合わせたわけではないけれど、出た言葉は同じだった。
『助けてくれてありがとう』
これを土方や鈴が聞いていれば目を剝いただろう。
普段の彼らからしてみればありえない言葉だ。
無論、それは土方や鈴相手だからこそというのもあるのだが。
珍しいことには変わりなかった。
「・・・・・・どういたしまして」
彼の穏やかな声と表情に見送られ、沖田と珠樹、レオンは門をくぐった。