誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
残った千早は格子の向こうにいる彼に問うた。
「あなたはいつも一言足りぬ。何故誤解を招くようなことを」
「誤解?何のことです?」
本当に分からないというように彼は軽く首を傾げた。
千早は軽く片眉を上げ、格子に背をもたれかけた。
「あなたが愛しているのは自分を奉ってくれている雷焔の里の民全てだろうに」
「えぇ。ですから奏を愛していると」
「ハァーーーーーーーッ。・・・・・・空気を読めなんだは昔と変わらぬか。あれはどこからどう聞いても男女の間のことだった」
「・・・・・・・・・・・え?」
彼は笑顔のまま固まった。
千早は自分よりも遥かに時を生きてきたはずの先輩神の抜け具合に頬に手を当てた。
その仕草はとても見た目子供のするものには見えない。
「まずいですか?まずいですよね?」
「我に聞かないで欲しい。我はそういう機微は分からぬ」
「何だか最後らへん話がおかしいなぁとは思ったんですよ?でもまさかそんな勘違いを・・・」
それであの曖昧な笑顔だったというわけだ。
慌てる彼に千早は冷静に返した。
「勘違いをさせるようなことを言ったのはあなただろうに」
「だってまさかそんな・・・・ねぇ?」
その後彼から発せられる言葉全てに知らぬ存ぜぬを通した。
それは監守が見回りに来て、千早が帰されるまで続いた。