誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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それから三日。
奏の意識はまだ戻らない。
「奏」
「大丈夫ですよ。あの時とは違いますから」
「あの時?」
心配そうに奏の側に座るあづさに、響はふんわりと微笑んだ。
言われた言葉がどういう意味かわからず、あづさは首を傾げたが、答えは返らなかった。
その時、静かな声が障子を開けずに縁側から聞こえてきた。
「渡辺、少しいいか?」
「はい。・・・・・何ですか?」
「お前に会わせたい方がいる。一緒に来てもらいたいんだが」
「分かりました」
あづさが部屋から出る時に山崎は奏の様子を窺がった。
しかし、まだ目覚めの気配が見えないのを見て、微かに落胆の色を表情に乗せた。
「そろそろ、もう一度診てもらった方がいいんじゃないか?」
あづさには請け負ったが、山崎を始め夜も巡回に出ている彼らは響がなかなか寝ずに傍にいることを知っていた。
これでは奏が目覚める前に響が倒れてしまう。
今日も夜中と朝方、鈴と斎藤、土方が半ば無理やり寝るように言い聞かせているのを耳にしていた。
「もう後は奏次第だと言われてしまったので」
「しかし、君自身も・・・・」
「私なら大丈夫です。これくらい、なんともありませんから」
「・・・・そうか。・・・行こう」
「あ、はい!!」
奏に似ている。
傍から見れば大丈夫ではないものを大丈夫というところが。
珠樹も、あれはプライドから来ているものだと思うが、かなりの強情だ。
山崎は少し苦笑をもらし、あづさと共に待ち人の元へ向かった。