誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
「それは褒め言葉と受け取っておきますね」
「奏っ!」
「もう大丈夫なのか?!」
「心配しましたよ」
「随分と寝てたみたいですからね。・・・不覚をとった」
悔しそうに眉を寄せる奏に、あづさは席を空けようとした。
しかし、奏は片手を上げ、その場に留めた。
「私はここでいいよ」
開けられた襖にもたれ座り、縁側に片足を伸ばして寛いだ。
肩に掛けられた羽織に黒髪が流れる。
「・・・珠樹と沖田さんは?」
「見回りだ」
「・・・・・・二人で?」
「さぁな?いなくなったのは同じくらいだったと思うけどよ」
「どういう風の吹き回しなんだろうな?」
「あいつらの思考回路は分からん」
奏は深く頷いた。
「鷹」
「・・・・・・何だ?」
「今回のは私も散漫だった。何を気に病む必要がある?」
「でもよ」
「それとも何か?私がお前に一から十まで世話されないといけないような子供だと?ナメてんのか?」
「んなわけねぇよ」
「ならいつまでもウジウジすんな。気持ち悪い・・・キモイ」
「・・・おい、奏。こっち見て言うんじゃねぇ」
「被害妄想甚だしい」
「このヤロ」
立ち上がり、奏の頭をグリグリと拳でねじりあげる土方。
痛いと反論し、鷹を身代わりにしようと手を伸ばす奏。
見事捕らえられ、グイグイと前に押し出される鷹。
見ている側には非常に微笑ましい光景だった。
「ホント、奏は素直じゃねぇんだから」
「だな」
「奏、目ぇ覚めたばっかりなのに」
「もう心配いらんだろ」
「あれだけ暴れられればねぇ」
響が持ってきた湯呑みに立った茶柱を見て、井上はほんのり笑った。