誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
あづさは突然現れた奏の姿に見惚れた。
中世の騎士服を完璧に着こなし、長い黒髪は一つに高く束ねられている。
その様は普段見ている和服や学校の制服とはまた違っていた。
いつもの和服での美が百合ならば、今は薔薇。
抱き上げられた女の子も顔を赤らめ、嬉しそうにしている。
「奏、その恰好・・・」
「ん?あぁ、これか?さっきまで仕事だったんだ」
女の子を地面に降ろし、どこからともなく袋を取り出した。
「ほら、良い子にはご褒美だ」
「うわぁい!!」
「ありがとう!!」
「あ、ずるい!!」
「かなで、ぼくたちのはー?!」
「あるさ。さぁ、順番だ」
『はーい』
どんどん奏の周りには子供達が集まってくる。
いつの間にか輪の外に追いやられたあづさの横に、藤堂達がやってきた。
「菓子につられんのはやっぱガキだなー」
「にしても末恐ろしい奴らだぜ。倒しても倒しても起き上がってくるんだからよ」
「あぁ。手抜いてるのが分かればギャンギャン抗議してくるしな」
藤堂達は男の子たちの剣の稽古をつけてあげていた。
ここは後の元老院入りをする者を見極める場、妖の学校である。
身分を問うことは決してない。
もちろん、家柄にものを言う輩もいないこともないが、結局は実力社会なのだ。