誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
・・・・・・あれ?
あづさは藤堂達の元を離れ、近くの木陰を目指した。
「・・・」
「どうしたの?具合悪い?」
体育座りをして俯いている十五、六歳くらいの少年の横にしゃがみこんだ。
少年は僅かに顔をあげ、チラッとあづさを見ると、また顔を伏せてしまった。
「えっ、と・・・具合悪くないならいいんだけど・・・」
「近寄るな」
「え?」
「どっかいけよ・・・人間のくせに」
最後は本当に低い声ではっきりとしていた。
それでもあづさはその場を動かなかった。
動けなかったという方が正しいかもしれない。
「君、人間嫌いなの?」
「嫌い?嫌いなんてもんじゃねぇ」
「・・・あづさ」
「・・・奏」
あづさの棟形に座るのが誰か悟り、奏は側にやってきた。
どうやらこの少年がどんな子なのか知っているらしい。
その顔が僅かに曇っている。
「ユーク」
「師匠、こいつら何も分かっちゃいねぇ。あいつらもだ」
土方達にじゃれつく子供達を忌々しそうに少年・・・ユークはじっと睨みつけていた。
ユークが奏の方を見る限り、師匠という言葉が指すのは奏のことだろう。
奏はその言葉にピクリと片眉を動かした。
「師匠なら、ここの教師がいるだろう?」
「あいつらはダメだ。人間と共存をとか甘ったるい事ばかり言う。んなことできたら・・・俺の家族は・・・っ」
ユークはくっと拳を握りしめ、唇を噛みしめた。