誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
ユークは立ち上がり、パンパンとズボンのお尻についた砂を払った。
「俺はあの日を忘れない。忘れることなんてできない。人間は敵だ」
「ユーク…お前」
「師匠も人間が嫌いだって言ってたじゃないか。なのにこんな…」
酷い裏切りにあった、あるいはそれと似た感情を覚えているのか、ユークはゆらゆらと瞳を揺らしている。
奏も何も言わない。
レオンが紅茶を飲みながらこちらを窺がっているのが分かる。
もちろん、レオンもユークの事情を完璧に知り得ていた。
「ユーク。人間にも色々な種類の者達がいる」
「…………」
ユークは苦々しい表情のまま、どこかへ走り去って行ってしまった。