誠─紅き華は罪人に祝福を与う─




ユークは立ち上がり、パンパンとズボンのお尻についた砂を払った。




「俺はあの日を忘れない。忘れることなんてできない。人間は敵だ」


「ユーク…お前」


「師匠も人間が嫌いだって言ってたじゃないか。なのにこんな…」




酷い裏切りにあった、あるいはそれと似た感情を覚えているのか、ユークはゆらゆらと瞳を揺らしている。


奏も何も言わない。


レオンが紅茶を飲みながらこちらを窺がっているのが分かる。


もちろん、レオンもユークの事情を完璧に知り得ていた。




「ユーク。人間にも色々な種類の者達がいる」


「…………」




ユークは苦々しい表情のまま、どこかへ走り去って行ってしまった。




< 51 / 59 >

この作品をシェア

pagetop