誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
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奏は桜の件の後始末の確認のために再び大学に来ていた。
あの後、綺麗に片付けられ、何事もなかったかのように元に戻されている。
代わりに似たような桜の木も密かに植えられた。
その木の幹にもたれかかり、奏は空を仰いだ。
「………………………」
雀が親子で飛び回っている。
しかし、何かに気づいたのか、雀達はどこかに去っていった。
すると、バチバチという音がして、草を踏みしめる音が奏の耳に入ってきた。
「………………………来たか」
奏は幹から体を離し、音の方を振り向いた。
「……元気そうで何よりだな。…栄太、桜花」
あの頃の面差しを残した青年が、毛並みの良い猫を抱き、顔には満面の笑みを浮かべて立っていた。
彼らを誘ってきた雷でできた蝶が奏の元に舞い戻り、奏の差し出した指先につかまる前にかき消えた。
この一帯に張られた結界はいまだ張られたまま。
人が入ってくる心配はまずない。
「奏お姉ちゃんこそ、久しぶりだね」
「…………………」
無垢な子供のように笑いかけてくる栄太に、奏は眉根を寄せた。
一方の桜花は、栄太の腕の中で大人しく、じっと奏の方を見つめていた。