誠─紅き華は罪人に祝福を与う─




──────────
────────
───────




奏は桜の件の後始末の確認のために再び大学に来ていた。


あの後、綺麗に片付けられ、何事もなかったかのように元に戻されている。


代わりに似たような桜の木も密かに植えられた。


その木の幹にもたれかかり、奏は空を仰いだ。




「………………………」




雀が親子で飛び回っている。


しかし、何かに気づいたのか、雀達はどこかに去っていった。


すると、バチバチという音がして、草を踏みしめる音が奏の耳に入ってきた。




「………………………来たか」




奏は幹から体を離し、音の方を振り向いた。




「……元気そうで何よりだな。…栄太、桜花」




あの頃の面差しを残した青年が、毛並みの良い猫を抱き、顔には満面の笑みを浮かべて立っていた。


彼らを誘ってきた雷でできた蝶が奏の元に舞い戻り、奏の差し出した指先につかまる前にかき消えた。


この一帯に張られた結界はいまだ張られたまま。


人が入ってくる心配はまずない。




「奏お姉ちゃんこそ、久しぶりだね」


「…………………」




無垢な子供のように笑いかけてくる栄太に、奏は眉根を寄せた。


一方の桜花は、栄太の腕の中で大人しく、じっと奏の方を見つめていた。


< 7 / 59 >

この作品をシェア

pagetop