誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
第二話─邂逅─
「桜花、おいで」
奏が手を差し広げると、桜花はそれを見て、栄太の顔色を窺うように上を向いた。
行ってもいい?
そう尋ねるかのようにニャーっと一声鳴く。
栄太はそっと桜花を地面に下ろした。
トトトッと走り寄ってきた桜花は奏の足元をぐるりと回り、頭を足に擦り寄せ、再びニャーっと鳴いた。
「お腹の傷は…うん、大丈夫のようだな」
「ニャー」
嬉しそうに鳴く桜花の首元を優しく擦り、微かに笑みを浮かべる奏。
しかし、次に栄太へと顔を上げた時、奏の表情は固いものになっていた。
「何故冥府の門をくぐらなかったのかはこの際だ、不問にしよう。私が聞きたいのはただ一つ」
「なに?」
「お前達、皇彼方に助力してはいないか?」
まどろっこしいことは嫌いだ。
そもそも栄太達でなくばこういった事実確認は問答無用の連行の上、第五課による尋問でなされる。
だが、奏は栄太達をつきだすつもりはない。
否、むしろ…
さりとて時間も長くはとれない。
単刀直入に問いただしたのはそのためであった。
「そうだよ」
「…………………」
「彼は僕の願いを叶えてくれた。この世は持ちつ持たれつ。僕が彼の願いを叶えてあげようとしても不思議ではないでしょ?」
「………………お前は…」
笑みの裏には邪気といったものは全く感じ取れない。
本心からの言葉のようであった。
…………栄太、お前は……お前も変わってしまったんだな。
奏は目を閉じ、そして目を開いた時、その黒い瞳には固い決意の色が濃く出ていた。