誠─紅き華は罪人に祝福を与う─
奏は桜花を栄太に直に手渡した。
そしてすっと距離を取り、腰の愛刀を抜いて、栄太に切っ先を向けた。
それが揺らぐことは、ない。
「もしもお前がこの世の均衡を崩そうとするならば、私はお前を斬る」
「………………本気?」
そこでようやく栄太の顔から笑みが消えた。
見た目相応の冷涼な声音でそう呟く。
奏は無言という肯定を示した。
「私は…お前のあの時の、困っている人を助けるために医者になるというお前の意思を、信じていたかったよ」
「……………気づかされたんだ。人はいつか死ぬ。それが早いか遅いかだけだって」
奏お姉ちゃんだって、知っていたでしょ?そんな当たり前のこと、と肩をすくめ、栄太は言った。
奏は答えなかった。
栄太はそれについて答えをさらに求めることはしない。
代わりにふいに顔を横へ向けた。
「よぉ、栄太。久しぶりじゃねぇか」
「お前もえらく人格変わっちまったみたいだな」
「桜花は変わらぬようだがな」
屯所に置いてきた土方達が顔を揃えていた。
口調は軽くとも、皆の表情は険しい。
特に永倉、原田、藤堂などは、よく栄太の面倒を見ていただけにそれがより一層のものとなっている。
「……………………で」
栄太が俯き、何かを呟いた。
しかし、皆の耳にそれが届くことはない。