守ってくれますか?
「ゼロは“本当の”人間ではない。一度死んでいる。ゼロは、人造人間だ。ゼロを作った・・・いや、生き返らそうと試みたのは、リヨンとレインだった。
リヨンは罪の意識から、償おうと思って。レインはゼロの兄として。
ゼロは一度死ぬ前は、ロゼという名だった。優しく美しい、天使のような娘だった。
ゼロとレインは生まれてすぐに孤児院に捨てられた。
2人は親の名前も顔も知らなかったが、とても仲がよく、いつも楽しそうだった。2人は周りを明るくさせた。
その時には、レインも明るい、ちょっと天然な優しい男の子だったという。
だが、ロゼが12歳の時に、悲劇が起きた。
孤児院に強盗が入った。賢者であるリヨンは、強盗を抑えようと孤児院に参上した。
そして、強盗に魔法をかけた・・・が、強盗が魔法をはね返し・・・あろうことか、ロゼの心臓に魔法が命中してしまった。
ロゼの体は強力な魔法に勝てるはずもなく・・・静かに倒れ、動けなくなった。そしてしだいに、冷たくなっていった。
ロゼは、12歳という短い生涯を終えた。・・・・・はずだったんだ。
だが、リヨンとレインが、ロゼを生き返らそうとした。2人共、耐えることなんかできなかったんだ。
2人の強力な魔法使いによって、ロゼは生き返ったかのように見えた。
だが、ロゼには心が無かったんだ。空っぽだった。
そもそも、人が1つの命を生き返らすことなんて、できるはずがなかったんだ。
リヨンは苦しみ、レインは恨んだ。神を。この世を。
空っぽのロゼに耐えられなくなったレインは、自分の心を、ロゼに移した。強力で難しい魔法を使って。
それでも、ロゼは元のロゼにはならず、まるでロボットのようになった。
優しい笑顔も、綺麗な涙も、困ったような表情も、明るい笑い声も、美しい歌声も・・・全てを無くした。
“何も無い”そう思ったレインは、ロゼを哀しみと苦しみを込めて“ゼロ”と呼ぶようにした。
だから、リヨンはレインには逆らえない。漆黒の神の仲間にだってなった。
彼は今でも己を責めている。
そしてレインは・・・・・傷つくことを恐れ、自らの昔の心をゼロに移したままにし、心に蓋をした。」