お嬢様重奏曲!
 さすがは学生を全員カバーしているだけあって寮も普通じゃ考えられない規模になっていた。
「なにぼけっと突っ立ってんねん」
「早く中に入りましょう? 御影さん」
「お、おう」
 さすがはお嬢様なのかあまりの大きさに気後れしている司とは違い、これが通常サイズと言わんばかりに平然としていた。
 中に入ると外見同様にとても金がかけられ高価な調度品や天井には大きなシャンデリアまで吊されて、それはまるでどこぞの超高級ホテルのようだった。
「まぁ少し狭い気もせえへんけど、ウチら学生やんか。仕方ないやろ」
「美琴! そういう事言わないの。これぐらいで調度いいの。そうですよね? 御影さん」
「………ははは」
 司はただ笑うしかなかった。
 二人はこの広さが当たり前、むしろ狭いと言っているのだ。
 司の家もそれなりには広いがそれでもこの寮よりも狭い。
 これが庶民と金持ちの感覚の違いなのだろう。
「さあ、御影さん。一年生の棟はこっちですよ。行きましょう?」
「あ、ああそうだな」
 玄関から一階の談話室を抜け一年生の棟へ向けて進んでいく。
「ちょっと、あなたたち。お待ちなさい」
 そこへ誰かに呼び止められ三人は足を止めた。
「なんや? 桜子やあらへんやないか」
「あっ幸路さん。ご機嫌よう」
 振り返ったその先には一人の生徒が立っていた。
 その生徒は司をまるで不審人物を見ているかのような視線を司に向けていた。
「神楽さん。桜塚さん。ご機嫌よう。ところでそちらの方はどなたですか? ここは男子禁制のはずですが?」
「桜子。そらなんかの冗談か? 司はここの生徒なんやから寮に泊まるのは当然やん?」
 すかさず美琴がフォローに入る。
「ああ。確か最後に呼ばれた方ですね? しかしそれとこれとは別問題です」
「そう言われたかてウチらは理事長に言われただけやし、荷物はもうこっちに届いてる言うし」
「理事長の? 失礼ですが理事長とはどのようなご関係ですか?」
 厳しい目で司を睨み付ける」
「それほんまに言うてるん? 司の性は御影言うんやで?」
「御影? 理事長と同じ性と言う事は…」
「ああ。ここの理事長、御影木の葉は俺の叔母なんだ」
 司の言葉に談話室の空気が変わり、美琴以外の生徒は息を飲んだ。
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