お嬢様重奏曲!
「……………シクシク。し、シドイ」
 教室の隅に泣いているメイド服の司が、床にへたりこんでいた。
「司も着替えたんだから、私も着替えたけど……なんか悔しい」
「せやな? なんか女として負けた気がするんは何でやろ?」
 そこにいるのは完璧に美人のメイドであった。
 少し肩幅があるのが、ネックではあるがスリムで顔立ちが整っているために、女装しても見事な着こなしなのだ。
 以前、茜のために女装して剣道の試合をした事があったが、あの時も制服も剣道着も似合っていたため、これはと思った美琴だったが、予想通りとても似合っており腹立たしかった。
「ま、まあええわ。そんじゃ美凪ちゃんと司は、これからクラスに貢献してもらうで」
「ってちょっと待て! 俺にはちゃんとした用事が」
「警備なら今は休憩時間やろ? 問題ないやろ」
「……ぐっ。なんでそれを」
「あらかじめ理事長にスケジュール聞くんは常識やんか」
「アハハ…。司さん。もう諦めたら?」
「薫さんまで。………もしや薫さんもグルか!」
 薫の目を見るが、薫は目を反らしあさってを見る。
「が、学校ってこんなにも恐ろしい場所だったなんて」
「いや。この学園が特別なんだろ。なんたって理事長があの木の葉さんなんだから」
「なるほど。それなら確かに納得出来るわね」
 二人の木の葉に対する共通認識は酷いものらしい。これには美琴も苦笑するしかなかった。
「ほなら二人にはしっかり働いてもらうで」
「マジっすか」
「当然やんか。司は外で客呼びやりいな。んで美凪ちゃんは中で接客な」
「なっ! なんで俺が外なんだよ」
「なんでて。そら学園の生徒やあらへんのやから、仕方あらへんやろ? それにその方がおもろ…ゴホンゴホン。さぁ始めよか」
「今面白いって言おうとしたろ!」
「男が小さい事言いなや。薫もセットにしてあげるから」
「そういう問題じゃないだろうが!」
「ほなら薫。後頼むな。忙しくなるで」
 美琴の目が眩しいほどに輝いている。
「諦めましょう? 司さん。ああなった美琴は止められませんから」
 薫も半ば諦めた様子で司の背中を押す。
「ぐっ……後で覚えてろよ。美琴」
 司は恨めしげな目で美琴を睨みながら、薫と共に教室を出て行った。
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