お嬢様重奏曲!
 教室の側に空間転移した司はそっと教室の前を確認する。
「……見張りは四人。臆病なのか、計算なのか」
 少しだけ悩んだが、今は何よりも時間が重要なのだ。
 魔力を足へと集中させ一気に教室の前へ。
「な、なんだ! 貴様はいっ…」
 四人が反応するよりも速く拳を叩き込み、気絶させる。
「さて。後はこの中がどうなってるか、だな」
 言葉とは裏腹に力強くドアを開ける。
 さっと教室を見渡す。
 生徒たちは両端へと集められ、その前に見張りが二人づつ。そして一番奥の中央に主犯と思われる男が一人、人質を取って座っていた。
「……刻羽さん」
 そう人質は目が見えず制圧しやすい刻羽だったのだ。
「……もしかして」
 刻羽が口を開こうとしたが、司が微笑むと刻羽は口を閉ざした。
「な、なんだ? 女。どうやってここに来た」
 主犯の男の顔に動揺の色が見える。
「あら? 見てなかったかな? そこのドアからだけど?」
「ふ、ふざけやがって!」
 見張りのうち二人が司へと襲い掛かる。
「グアッ」
「ガハッ」
 だが二人は司の手前で勝手に吹き飛び壁に叩き付けられた。
「人質を解放してもらおうか?」
「て、てめえも魔法使いか!」
「遅いよ。その反応」
 司が右腕を振り上げる。すると目の前の空間が歪み始めたのだ。
「誰にケンカを売ったか教えてやるよ」
 歪みは次第に大きくなり、とうとう主犯の男を飲み込んだ。
「そいつは次元の歪み。一度飲み込まれれば、あんたレベルじゃ脱出は不可能だ」
「こ、この強さ。まさか守護者か! 助けてくれ! 人質なら解放する」
 主犯の男が刻羽を突き放す。
「きゃっ」
 よろける刻羽を司が支える。
「大丈夫? 刻羽さん」
 刻羽は顔を上げ無言で頷く。
「ってなわけで。お前らにはもう用無しだ」
「な! 人質は解放したじゃねえか」
「だからって俺が見逃すとでも思ったか?」
 司が残った見張りの二人に手をかざすと、二人は一瞬でその場から消える。
「じゃあな? 一生会う事はないけど
 再び主犯の男に手をかざすと、先ほどと同じ空間の歪みが現れ、男を完全に飲み込み、歪みは消滅した。
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