お嬢様重奏曲!
「今の全て幻術ね」
「………幻術? ……幻術ですって!」
 木の葉の言葉に美凪がようやく我に帰る。
「あったり前だろ? たかだかこの程度の相手に、あんな無駄遣い出来るかっての! 本気であれやったらかなり疲れるんだからな」
「それって」
 つまりあの幻術と同じ事を司は再現出来ると言う事なのだ。
 歴代最強。この四文字を美凪は改めて実感させられた。
「さて。襲撃犯はこれで全員制圧した。後は警察に突き出して任務完了だな」
「そうね。それじゃ後の処理は私がやっておくから、後夜祭を楽しんできなさい」
「ってこの状況で後夜祭なんてする気なんですか? おばさま」
 木の葉の言葉に美凪は目を丸くさせる。
「あら? 当然じゃないの。本当は学園祭をやり直したいくらいよ」
「美凪。忘れたのか? 木の葉さんはこういう人だ」
「そ、そうだったわね」
「ちょと! それはどういう意味かしら?」
「それじゃ木の葉さん。後よろしく! 行くぞ、美凪」
「了解」
 さすがは幼なじみなのか、瞬時に司の意図を察し美凪はすぐさま司の背中を追い掛けて行った。
 それから時間が過ぎ、既に日が落ちているが、生徒だけ集まり後夜祭を楽しんでいた。
 美凪は仕事が入り後ろ髪を引かれつつも、学園を後にしていた。
 司はと言うと、一人屋上に上がり大の字に寝転がって、夜空を見上げていた。
「やっぱ都会なだけに星は見えないか」
 満足出来ない司は右手を夜空へと振りかざす。
「要はガスが邪魔してるんだろ」
 魔力を集中させると、学園の真上だけ満天の星空が広がった。
「………うしっ! よいよぉよいよぉ」
 満足したのか今度こそ笑顔で夜空を見上げる。
「なんか今日は色々と大変だったぜ」
 女装させられたりそのまま喫茶店手伝わされたり、テロに襲われたり。
「…………あれ? なかなかいい思い出が出てこないぞ?」
 人生初の学園祭なのになんだか踏んだり蹴ったりの記憶ばかりだったりする。
「なんか俺って」
 切なくなりそうになったその時だった。
「あっ。司さん、こんなところにいたんですか? ってうわ〜。ここ星空がきれいですね」
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