お嬢様重奏曲!
「何やってるのよ。あいつは」
 当然、美凪も木の葉の横に立っている司へと意識が行く。
「ちょっと司! あんたそんなところで何してるのよ。あんたまさか」
 司に美凪は念話を飛ばす。
「皆まで言うな。命に関わる」
 司の言葉に美凪は、思わず頭を抱えそうになった。
「…どうせ木の葉さん絡みなんでしょ?」
「なぬっ! 美凪ってもしやエスパー?」
「私はエスパーじゃなくて魔法使い! 全く止めてよね? 知り合いだと思われるじゃない」
「全然知り合いじゃねえか。宗家と分家だし幼なじみだし」
「御影が見世物になるなんて、世も末ね」
「…ああ。俺もそう思うよ」
「これ以上、話してると私まで感染されそうだから、切るわね」
「おい! 俺は病原菌か! おい! くそっ。念話切りやがった」
 もう一度繋げる事も出来るが、一瞬感じた殺気に司は断念する。
 そして司を見ていたのは何も新入生だけではない。
「あれ司と違うん?」
 美琴が指差す方を薫は見渡す。
「え? どこどこ? ………あ、本当だ」
「司様、あのような場所で何をしていらっしゃるんでしょうか?」
 咲枝も司を見つけ首を傾げる。
「どうせ理事長に面白い事でもやらされてるんやろ」
「でもあれじゃ司さん。見世物じゃないですか」
「御家柄の関係もあるのでしょうか?」
 去年学園祭に起こった事件で、司のクラスメート全員が、司が魔法使いである事を知る事となった。
「しっかし理事長もええなぁ」
「何がですか?」
「なんや咲枝。見たら分かるやんか」
「分からないから尋ねているのですが」
「理事長ったら権力を使うて司に好き放題やんか。学園祭の女装と言い、今かてああやってはべらかしてんやで? 羨ましく思わへんか?」
「そ…それは」
「そ、そう言われるとちょっとは」
 二人ともそれなりに気があるらしく、赤くさせた顔で司を見つめる。
「薫、ボサボサしてられへんで? 新入生も加わって、ライバルが増えたんやからな」
「っ! 美琴。な、何言ってるのよ。私と司さんは別にそんなんじゃ…」
 ほてった頬を両手で冷やし、薫は顔を俯かせたのだった。
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