お嬢様重奏曲!
 いざ最上階に着いて見ると、そこは世間一般的に言えばいわゆる屋根裏部屋だった。
「…………ごめんなさい御影さん。こんな場所しかなくて」
「まぁ運が無かったちゅー事で諦めるしかないなこれは」
 二人はかなり落胆してはいるが、司から見ればそこは十分過ぎるほど広かった。
 それとなぜかいろんな物がごちゃごちゃと散乱している。
 埃のかぶり具合から見て結構、日にちが経っているのが分かる。
「ねえ? そこら辺に散らかってるのは?」
「あれは先輩方や皆さんが使わなくなった物なんです」
「まっ言い換えればここは物置やな」
 確かにここまで物が散乱し、かつ埃まみれならば金持ちのお嬢様は使わないだろう。
 そのうえ司の荷物まであるので整理しなければ足の踏み場もない。
「………こりゃまず掃除からだな」
「あの、何か手伝いましょうか?」
 薫が申し訳なさそうに見つめる。
 ありがたい申し出だがさすがにこんな埃まみれのところに長居をさせるわけにもいかないし、掃除だけではない。散乱している物を整理しなくてはならないのだ。
「気持ちだけ受け取っておくよ。自分の事は自分でやりたいし」
「でも…」
 どうにも食い下がってくる。よほど負い目を感じているらしい。
「………んじゃあそうだな? 多分片付け終わったら腹が減るだろうから、なんかおごってよ」
「分かりました。じゃあ私何か作りますね? こう見えてお料理は得意なんです」
「そっか。んじゃ頼むよ」
「はい♪ 行こう? 美琴」
「ん? せやな。ほなら待っときや」
 薫に急かされ美琴も屋根裏部屋から去って行った。
「さて。やるとしますか」
 司が腕を振るうと壁に付けられている窓が一斉に全て開いた。
「お次は埃を外へ」
 部屋の中に風が巻き起こり、埃を巻き上げそのまま窓から外へと抜け出して行く。
「次はこれ!」
 司は目の前に水の塊が現れ部屋の隅々に走らせる。
 全体に行き渡ったところで濡れた場所を一瞬にして水分を蒸発させ乾燥させた。
「んで荷物の整理か」
 散乱している中にベッドやタンスそれにソファーなど、必要な家具が大体揃っていたため買う手間が省けた。
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