お嬢様重奏曲!
 会場にしばらくの沈黙が続く。
 パチパチパチ。
 木の葉が一人拍手する。すると続けて美凪が。そして薫や美琴、そして咲枝と拍手の輪が広がりやがて大講堂全体に拍手が鳴り響いた。
 一事件があったものの何事もなく無事に入学式の幕が閉じた。
「やれやれだせ」
 制服からスーツに戻った司は中庭にある大きな樹の木陰で一休みしていた。
「とうとう、自分とこの次期当主を見世物にしやがって」
 休んではいるが結界は解除しない。今日一日が終わるまできっちりサポートするのが、プロである。
「しっかし久々に緊張したぜ。まさかあんな大人数のしかも全員が女ばっかりの中で喋る羽目になるとは」
「司さーん」
 校舎の方から薫たちがやってくる。
「こっちにいたんですね? 探したんですよ」
「随分と大物ぶりやんか。自分有名人なん自覚ないんか?」
「司様らしいと言えば司様らしいですね」
 三人がそれぞれ感想を言ってくる。
「そりゃ悪かったな。そんで? 俺に用があるんだろ?」
「はい。皆で美凪ちゃんの歓迎会をしようと思いまして。それで司さんもどうかな? って。あっ他に用があるんでしたらいいんですけど。でも来てくれたら美凪ちゃんもわ、私も嬉しいかなって…」
 昔よりも自分を出している薫を見て司は安心していた。
「……そうだな。とりあえず、入学式が終わったから木の葉さんに報告しなくちゃならないから、その後で行くよ」
「ありがとうございます司さん。場所は私の部屋ですから」
「迷わずいらしてくださいね? 司様」
「その心配はあらへんやろ? どっかの方向音痴と違うてな」
「むー!」
「アハハ。冗談やて」
「もう、二人とも。と、とにかく待ってますから、ぜひいらしてくださいね」
 三人は賑やかに司と別れ、寮へと向かって行った。
「さて。そんじゃ俺もそろそろ木の葉さんとこにちゃちゃっと報告済ませるとするか」
 よっと軽い身のこなしで立ち上がり、土埃を払う。
「やっぱ着替えた方がいいよな」
 理事長室で木の葉に報告を済ませた司は、一度自室へ戻り着替えを済ませ、歓迎会が行われている薫の部屋へと向かって行った。
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