お嬢様重奏曲！

「ほっほう？　美凪もそこまで魔法が使えるようになったわけだ！」
　司も同じように、両手を振り上げる。
　すると頭上に黒い球体が現れ、次第に大気や光、時間などを吸い込みながら、黒い球体はその姿を大きくしていく。
「今度はマイクロブラックホール？」
　チャオランたちは司が作り出したブラックホールに、吸い込まれないように必死に踏ん張っていた。
「あの二人を止めないと、この空間どころか次元さえ壊れてしまうね」
「そうなると、どうなるの？」
「そこからさらにブラックホールが発生し、地球は消滅するね」
　チャオランの言葉にケンカをしている二人を除き、全員が絶望を感じていた。
　地球の命運はあの二人にかかっているのだ。
　だが誰も声を出す事が出来なかった。膨大で密度の高い魔力を、全員が感知してしまったのだ。
「「消え去れ！」」
　二人の腕に力が込められる。
　もう駄目だ。誰もが諦めたその時だった。
「あんたたち！　こんなところで何してるの！　今すぐ止めなさい！」
　聞き覚えのある声が聞こえてくる。
　その声を聞き、二人の動きが止まった。
　見上げて見ると、そこには腕を組み、怒りマークを浮かべる木の葉がいたのだ。
「こ、木の葉さん」
「おばさま」
　二人の表情が凍り付く。
「あんたたち。御影を継ぐ立場だって分かってるの？　しかも神楽さんたちまで巻き込んで」
　木の葉の言葉に二人は下を見下ろす。すると薫たちが怯えた表情で、二人を見上げていた。
「ほらっ！　ボサッとしないでさっさと魔法を解除して空間の修復！」
「「はい！」」
　司と美凪は魔法を解除し空間の修復を始める。
　それでも口ゲンカはしていたが。
　木の葉が六人の元へと降り立つ。
「大丈夫？　怖かったでしょうに。もう大丈夫だから」
　この時六人は初めて木の葉の偉大さと司や美凪の凄さを実感した。
　それと同時に魔法使いの世界に足を踏み入れると、これが日常になるのだと実感し安易に決めてはいけないと思い知ったのだった。