お嬢様重奏曲!
 魔法訓練の翌日、放課後になると司は早速私服に着替え、真夜の待つ一年の寮へと向かう。
 今回は仕事の依頼ではないため、正装するわけにはいかないのだ。
 それでもそれなりの装備をして、万が一に備える。
「……えっと、真夜ちゃんはっと」
 寮の前まで来ると、周囲を見渡す。
 すると玄関の隅の方に巫女服を着た真夜が、ひっそりと立っていた。
 司とは違い正式な依頼であるため、正装でなければならないのだが、何と言うか、場違いと言うか一人だけ浮いている。
「よっ。真夜ちゃん。お待たせ」
「あっ御影先輩………こ、この度はご協力ありがとうございます」
 司の姿を見つけた途端に真夜は顔を赤くさせ、顔を俯かせた。
「ん? なんか俺の服装、変だった?」
 不安になったのか司は自分の姿を見下ろす。
「い、いえ。そそそ、そんな事ないです。……はい」
 今にも消え入りそうな小声で真夜が囁く。
「そか。安心した。んじゃまずはその御祓いをするって、場所に下見しようか? 敵情視察ってやつだな。場所分かる?」
「はい。学園から少し離れていますが」
「そっか。んじゃ行くとしますか」
「そうですね? それではタクシーを拾って」
「それじゃ駄目だ」
 司は真夜の言葉を遮り腕を掴む。
「あ、あの御影先輩?」
 自分の体温が一気に上昇していくのを、真夜は実感する。
「行くよ」
「え? 行くって……」
 真夜の言葉が途中で途切れ、二人の姿がその場から一瞬にして消えた後、いくつかの人影が玄関の側へと集まったのだった。
 一方、真夜と司は目的地へと到着した。
「ったく。抜目ないやつらめ」
 司は半ば呆れため息を吐いた。
「御影先輩。これは一体」
 いまだ状況を飲み込めていない真夜は、不審な表情で司を見る。
「ああ。チャオがすぐ側で隠れてたもんだからな。首を突っ込まれる前に逃げ出したってわけ」
「チャオがですか?」
「ああ。後、刻羽さんに美凪もいたかな?」
「私、全然気付きませんでした。それに人除けの法術を使っていたのに」
「チャオのマジックキャンセラーだな。あいつは常に起動させてっから」
 司の言葉に真夜はいちいち驚いていた。
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