お嬢様重奏曲!
 司は真夜から離れ魔力を収束し増幅させていく。
「あ、あの……御影様。今なんて」
「ん? だから両方どうにかしようって」
「出来るのですか?」
「まあな? ちと強引だけど」
「ですがどうやって」
「これからそいつが喰った土地神の力を、この土地に戻した後に真夜の使い魔にする」
 司の言葉に真夜は喜びと驚きがあった。
「……確かに真夜ちゃんの考えは甘いかも知れない。美凪なら強引にでも銀狼を倒していただろうな? だが俺は手段があるのならばそれに賭けたい」
 司を中心に大きな魔法陣が描かれる。
「それに言ったろ? 真夜ちゃんを全力でサポートするってよ」
 続いて銀狼と真夜の足元に違う魔法陣が重ねられる。
「こいつは賭けだ。真夜ちゃんがこいつを受け入れるだけの器がなきゃ、使い魔の儀式は成功しない。やれるか?」
「はい! 両方助けられるのであれば」
「うし! 始めるぞ」
 銀狼と真夜の下にある魔法陣が強く輝く。
 自分の中に異物を取り込むと言う事はかなりの負荷がかかる。
 しかしこればかりは司は手伝う事が出来なかった。
 契約の儀式はかなり繊細で下手に横槍を入れると、失敗する可能性が非常に高いのだ。
「……頑張れ。真夜ちゃん」
 額にうっすらと汗をかき頑張っている真夜に、司は静かにエールを送った。
 使い魔契約の儀式は言わば精神のぶつかり合いである。失敗すれば精神を支配され廃人となってしまう。
 やがて魔法陣の光が消える。
「ふん! 認めてやる」
 銀狼が悔しそうに呟き真夜が優しく微笑んだ。
 つまり銀狼に真夜を認めさせる事に成功したのだ。これで後は血の契約を結べば、儀式は終了である。
 真夜が銀狼の目の前まで歩み寄り、左手を銀狼の上にかざす。
 銀狼が真夜の指先を軽く切ると、そこからぷっくりと血の固まりが膨らみ、やがて血の一滴が銀狼の頭へと落ちた。
「ここに血の契約を結び、汝を我の使い魔とする」
「汝を我が主と認めようぞ」
 違いに契約の言葉を交わし、これで使い魔契約の儀式は完了した。
「おめでとう。真夜ちゃん。よく頑張ったね」
「ありがとうございます御影先輩」
 その時の真夜の笑顔はとても澄み切っていた。
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