お嬢様重奏曲!
 契約を終えた銀狼はその場から消える。それと同時に真夜が力尽き、その場に崩れ落ちそうになった。
「おっと」
 真夜の体を司は素早く抱き留めた。
 心身共に限界まで振り絞ったのだから仕方ないだろう。
「大丈夫かい? 真夜ちゃん」
「あ、御影先輩………ってだ、だだだだだ大丈夫です! 屁のツッパリはいらんのです!」
 抱きかかえられている体勢に気付き、光速を越える速さで司から離れる。しかもかなり動揺しているようだ。
「ははは…。これでとにかく任務完了かな?」
「あ、はい。手伝って下さってありがとうございます。私一人ではきっと何も出来ずにいたと思います」
 真夜は深々と頭を下げる。
「そんな事ないさ。俺はちょっと背中を押しただけだし」
「そんな…私なんて」
「これからの課題はもっと自分に自信を持つ事、かな」
「……精進します」
「んじゃさっさと報告を済ませようか? そこでコソコソしてる連中に」
「え?」
 司の言葉に真夜が振り返る。すると物影から数人の男女が現れた。
「お父様にお母様。それに宗家の方々がどうしてここに」
「んなもんは決まってるさ。監視してたんだよ。もし失敗した時のためにな」
 その言葉に現れた全員ばばつの悪そうな表情を見せる。
「お父様、お母様。それと宗家の方々。依頼を完了しました」
「う、うむ。そうか」
 複雑な表情を見せている塚本宗家の連中に対し、真夜は真っ直ぐな視線で丁寧にお辞儀をする。
「んじゃ行こうぜ? 真夜ちゃん」
「え? ですが…きゃ」
 戸惑う真夜を半ば強引に腕を引き、司は神社跡を出る。
「待たれよ。御影よ」
 その声に司は足を止め、振り返る。
「文句があんなら正々堂々来い。真夜ちゃんみたいな女の子にこんな仕事させやがって」
 空気が震えたと思いきや、今度は司以外の全員が動けなくなる。
 それは司が初めて放つ殺気だった。
 つまり全員司の殺気に当てられ動けなくなってしまったのだ。
「無事解決したのは真夜ちゃんの実力だ。それはあんたらも見てただろ?」
 司から放たれた殺気が消え、ほとんどがその場に崩れ落ちた。
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