お嬢様重奏曲!
 島全体をスキャンし終えた司は、ある事に気付き首を傾げていた。
 魔力感知をかけた際、微弱ではあるが薫と咲枝の魔力を感知した。これは二人がしっかりと訓練している証拠である。
 それはとても喜ばしい事ではあるが、それが問題ではない。
 司は魔法で目の前に島の全体図を、立体映像で 写し出し魔力感知をした結果を上書きし、全体図を編集する。
「………やっぱり」
 何度も全体図を見直すも、遺跡らしきものも埋まっていると思われる場所も全く見当たらなかったのだ。
 木の葉がデマの仕事を依頼するわけがない。
「なるほどね。だから遺跡の発見と調査ってわけか」
 遺跡があると言う情報はあるが、実物がない。だから探して調べろ。と言うのが、今回の本当の依頼内容なのだろう。
「めんどくさっ! ったくクラスメートとも一緒だし踏んだり蹴ったりだな、こりゃ」
 立体映像を消し、周囲を見渡す。
「なんか視線を…ってあれか」
 空を見上げた先には昼間にも関わらず、輝く点がかすかではあるが動いていた。
「チャオあたりか。こんな事すんのは」
 昼間に輝く動く点。つまり人工衛星である。チャオならばシステムにハッキングするのは、簡単だろう。
「世の中、そう上手くいくと思うなよ?」
 人工衛星を見つめ、右腕を振り上げる。
「……さて。とりあえずはホテルに戻って、この島周辺の地図と海図を調べないとな」
 すぐに腕を降ろすと、何事もなかったかのように司は、ホテルへと戻って行った。
 部屋に着くと早速、パソコンを起動させ地図と海図を呼び出す。
 それをプリントアウトすると、地図と海図をベッドの上に広げる。
「何もこの島にあるとは限らないんだよな。伝承では残ってても、地殻変動とかで海の中や島から切り離された可能性もあるんだから」
 地図や海図の他にも、いろんな書物だったりパソコンでも情報を集めていく。
 しかし情報を集めれば集めるほど、謎は深まっていくばかりだった。
「はてさて、どうしたもんかな」
 色々な可能性を考慮し様々な角度から、調べてみたが糸口さえも見つからなかった。
 ピンポーン。
 そこで玄関からチャイムが聞こえてきた。
 しかしドアは部屋の主を待たずして開かれた。
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