お嬢様重奏曲！
第十七章　魔法使いの誕生
　いつものように魔法の訓練のためいつものメンバーが、いつもの場所に集まっていた。
　そして司と美凪が見守る中、薫と咲枝と刻羽そして真夜が魔法の訓練を行い、その横でチャオランが何やら機材をごちゃごちゃと持ち込み、データ収拾に勤しんでいた。
　薫、咲枝、刻羽の三人はすでに基礎訓練を終えて次の段階へと進んでいた。
　魔力の感知並びに収束と増幅の次はいよいよ構成を構築し、世界に干渉させ魔法を発動させる。最初ならば誰だって多少訓練すれば出来るのだが、次の段階から極端に難易度が上がるのだ。何せ世界のシステムに干渉するのだから、当然と言えるだろう。
「この段階に来ると命に関わるから、例え構築速度が遅くても上手くいかなくても、焦らずゆっくり構成を構築する事」
　司の言葉に四人が真剣な面持ちで頷く。
「構成を失敗すると、魔法が暴走して大怪我しちゃうからね。もちろん私と司が全力でフォローして、そんな事がないようにするわ。守護者としてね」
　美凪の最後の言葉に薫はクスリと微笑み、司を見つめた。
「まずは基本の四大属性である火・水・土・風の訓練から」
　四人の前に司はそれぞれ四枚の紙を並べる。
「この四枚の紙にそれぞれ属性魔法で破く事。火なら紙を燃やし、水なら濡らし土ならボロボロに崩し、風なら紙を切り裂く。順番はどうでもいいから、四枚全てクリアする事」
　四人はそれぞれ返事をして魔法の訓練に取り掛かった。それと同時に美凪が展開させている結界の強度を高める。
　この訓練において最も必要な事は分子結合の使い分けである。
　酸素分子を振動させれば燃焼するし、水素分子を緩く結合させていけば水が生まれるし、紙の分子結合を解けば崩れていくし、結合させずに動かせば風が起こる。言ってしまえば簡単な化学反応なのだ。
　これが理解出来るか出来ないかで、構築速度が変化するのだ。
　しかしそれでも構成を失敗すれば魔法が暴走し、大惨事になる事があるのだ。まだ魔力が小さければ被害も小さいが、大きければ命を落とす危険性もある。魔法の暴走で命を落としていった魔法使いを、司と美凪は何人も知っているし何人も見てきたのだ。
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