お嬢様重奏曲!
 四人の中でやはり一番精度が高く、速度が速いのは真夜だった。これは司も真夜も予想通りだった。しかし以前よりも構成が繊細で緻密になっていた。これにはさすがの美凪も驚き、悔しそうに美凪は真夜を見ていた。
 そんな美凪を余所に司は残りの三人を見る。基礎はちゃんと出来ているのだが、構成の構築に手間取っていた。何せ今までにない感覚で、全くの未知なる事をしようと言うのだ。ちなみに司は歴代最短の一日ですでに初級をクリアし、中級に取り掛かっていた。
「予想以上に難しいですね。これは……」
 咲枝は何やら大きな本を取り出し、パラパラとページをめくっていた。見た限り何かの魔法の指南書だった。多分木の葉か美凪にでも借りたのだろう。
「魔法め。こんなの私が本気を出せば!」
 刻羽は袖を捲くり何やら気合いを込め、紙を指差しながら唸っている。何と言うか、やる気が空回りだった。
「えっと確か火は……あっありました」
 薫は手帳をパラパラとめくり、先端に星の飾りが付いたステッキを振りながら、プラクテ・ビギナルなんてどこかの魔法先生が教えた初心者用の呪文を唱えている。
「あれはまた美琴の仕業だな。後でぶっ殺決定だな」
 そんな様子をチャオランは嬉しそうにデータとして、記録していた。
「あ、あの。美凪。そこまでむきにならなくてもいいと思うけど」
「ほっほう? それは勝者の余裕ってやつ? そうでしょ。そうに決まってるわ! だけどまだ私が負けたと決まったわけじゃないんだからね!」
 その横では真夜と美凪が構成の精度を、競い合っていた。と言っても真夜の構成を見た美凪が勝手に、一人で突っ走っているだけなのだが。それを真夜が健気に付き合っているのだ。
「美凪! 結界の維持を忘れるなよ」
「っさい! 分かってるわよ。そんなの。話しかけないで! 気が散るから」
 真夜と勝負しながらもちゃんと結界の維持をしているところが、さすがは分家の次期当主と言ったところだろう。
「うわっ。気が付けば俺一人だけが置いてけぼりかよ」
 司は何だか一人だけ取り残され、少し寂しがりつつ訓練の様子を見守っていた。
< 160 / 200 >

この作品をシェア

pagetop