お嬢様重奏曲!
 空を見上げればもうすでに日が落ち夕暮れになっていた。三人を見れば表情にも疲労の色が見えていた。
「今日はここまで!」
 三人の構成を強引に支配し、無理やり訓練を中断させる。
「ちょと! 司君! 勝手に止めないでよ。私ならまだ出来るもん」
 大声を上げて講義する刻羽に司はため息交じりで、歩み寄ると背中を軽く押す。
「司君。何を…あれ?」
 刻羽の体は踏ん張りが利かず、床にへたりこんだ。
「魔法ってのは自分が思ってるよか体力を消耗するもんなんだよ」
 どうやら今ので腰が抜けたらしく、刻羽はその場から立てずにいた。
「でも美凪ちゃんも真夜ちゃんも平気だけど」
 薫が今の今まで争っていた二人を指差す。
「二人とも魔力の使い方を分かってるからな。薫さんたちは魔力を扱い切れてないんだ」
「私は反論しません。他人の構成をそれも三人同時に奪うと言うのが、いかほど凄いものか存じておりますから」
 咲枝だけが素直に司の言葉に従う。
「あ〜! 咲枝ちゃんだけそうやってポイントを稼ごうとしてずるい」
 咲枝の態度を見て刻羽が批難する。
「べ、別に私はそんな事など」
「ってか刻羽さん。何のポイントですか?」
「そんなの決まってるじゃん。司君の好感度ポイントだよ」
「決まってるんですか。それ」
「当然!」
 肩を落とす司に対し刻羽は胸を張っていた。
「もう終わりアルか? 何だかつまらないね」
 チャオランは不服そうな顔でシステムを終了させ、機材を片付け始めていた。
「それと最後に一つ。この訓練は必ず俺か美凪の立ち会いで行う事。絶対に一人でしないように」
 三人の顔をそれぞれ見つめ言い聞かせる。
「何度もしつこく言うようだけど、どんな初歩的な魔法でも暴走すれば命に関わる危険性がある。皆は未来がある。その未来を自ら奪うような事はしないように。分かったね?」
「うん。分かったよ。司君の言う事に従う」
「分かりました。司様。肝に命じておきます」
「分かってるよ。司さんを悲しませるような事したくないですから」
 三人それぞれの返事に満足し、結界を解除し解散したのだった。
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