お嬢様重奏曲！

　司の構成を見てまず最初に咲枝の構成に変化が見られた。以前よりも構築速度が上がり、精度も良くなっている。さすがは一番熱心なだけある。
　他の二人も若干ではあるが、成長の兆しが見え始めていた。
「うむうむ。良きかな良きかな」
　やはりこの三人は魔法の才能があるようだ。例え僅かでもこの短時間で、成長を見せるのはたいしたものである。
　チャオランも嬉しそうに鼻歌を交えながら、データを入力していた。
　それに負けじと真夜も集中力を高めている。互いにいい競争相手の関係になっていた。これはいい傾向である。
　そして訓練を開始してからしばらくしての事だった。
「……で、出来ました」
　咲枝の方を見ると目の前にあった紙が燃えていたのだ。
　それに続くかのように薫は紙がびしょ濡れになり、刻羽は紙が真っ二つに切り裂かれていた。
「凄いよ！　よくこの短期間で魔法が使えるようになったね」
「そうね。これには私も驚いたわ。見直したって感じね」
　これには司だけではなく、美凪も素直に賞賛した。全くの素人が一年も経たずに、初歩ではあるが魔法を使えたのだ。これは才能があるからこそと言えるだろう。
「ありがとうございます。司様美凪ちゃん」
「フフッ。ありがとうございます。司さん美凪ちゃん」
「司君や美凪ちゃんに褒められるなんて夢みたいだよ」
　三人が二人の言葉に素直に喜んでいた。
「これは私もおちおちしていられませんね。すぐ先輩たちに追い抜かされてしまいそうです」
　今の実力から見てもお世辞に過ぎないのだが、真夜のこの言葉で三人のテンションが急上昇し、さらに訓練にのめり込むようになった。
「司。本当にこれでいいの？　このままじゃ三人とも…」
　不安そうに美凪が司を見つめる。
「心配ないさ。彼女らには魔法以外にやらなきゃならない事がたくさんあるんだ。今、魔法を教えてるのは困った時に選択肢を一つ増やしてあげてるだけだから」
「……それならいいんだけどさ」
　司の優しい笑顔を見て美凪はそれ以上何も言えなくなり、訓練している先輩たちを見つめたのだった。
「大丈夫。何とかなるさ。いや何とかするさ」
　司は自分に言い聞かせるように、囁いたのであった。