お嬢様重奏曲!
 魔法の訓練もかなり進み全員の紙が後、一枚と言うところまでやってきた。そしてそれはつまり三人がそれぞれ一番苦手な属性が残ったと言う事になる。そしてその最後の一枚に苦労していた。
「も〜。残り一枚だって言うのに」
 刻羽がその場に寝転がりふて腐れる。
「アハハ……。その最後の一枚が問題なんですよね」
 その様子を見て薫が苦笑する。
「理屈は理解しているつもりなのですが」
 さすがの咲枝もこれには参ったのか、少し疲れた表情を見せていた。
「頑張って下さい。皆さん構成はちゃんと出来ています。後はイメージさえ上手く掴める事さえ出来れば」
 三人の様子を見て真夜が慌ててフォローに入った。
「確かにデータを見る限りは途中まではスムーズに行ってるね」
 これにすかさずチャオランが援護射撃を出す。
「でも魔法使いとしてイメージが組み立てられないって言うのは、はっきり言って三流以下ね。魔法使いになる事をお止めになる事をお薦めしますわ」
 最後の最後で美凪が一気にたたき落とす。しかし美凪の言葉に三人は何も言えなかった。
 美凪も真夜もそして司も今以上に辛く苦しい訓練を受けてきたはずなのだ。特に司は御影宗家の次期当主である。それはもう自分たちが想像した以上の地獄の訓練を行ってきたのだろう。
 才能だけでは決して強い魔法使いにはなれない事を、薫たちは改めて認識させられたのだった。
「まあまあ。焦らずゆっくりやろうよ。この四属性の使い分けが出来れば後は、それの応用みたいなものだからさ」
 司はあまりヒントやアドバイスを出さなかった。悩み考えそれでようやく出た答えが、自分の力になると思ったからである。
 答えを簡単にあげてしまうと、いざ難題にぶつかった時、応用が出来ず立ち止まってしまうからだ。
「実は今まで隠してたけど、最初より結界の強度を上げてるんだ。これの意味、解る?」
「それはつまり私たちの魔力が上がっていると、司様はおっしゃりたいのですか?」
 司の問いに咲枝が答える。
「なるほどねぇ。んじゃ後ちょっとで司君や美凪ちゃんのような魔法使いになれるってわけだ」
「だったらもっと頑張らなくちゃいけませんね? 応援して下さってる皆さんのために」
 司の言葉に三人は少しだけではあるが、テンションが回復した。
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