お嬢様重奏曲!
 チャオランが加わってから司は思いの外苦戦していた。
 真夜がサポートし美凪が先手を打ち、隙が出来たところで薫たちが魔法を放つ。その間チャオランは改良番指向性マジックキャンセラーで司の魔法を弱体化させつつ、薫たちの援護に回って後方支援に徹していた。
「くっ。冗談ではない」
 思わず司は後退する。まさか頭脳が加わるだけで、ここまで苦戦するとは予想もしていなかったのだ。
「たいしたもんだよ。ったくよ!」
 全員に意識を向けていられる余裕も次第になくなってきていた。なぜなら美凪がムキになり、攻撃が激しくなってきたからである。それは真夜がサポートしきれない程である。
 だからであろう。この時チャオランが意味深な笑みを浮かべている事を。薫の姿がなく咲枝と刻羽からの魔法攻撃がない事を。
「メインは美凪じゃねえだろうが!」
「ぶちまけろ!」
 美凪の魔力が最大にまで膨れ上がる。
「クソッ」
 仕方なく防御障壁を展開させよとしたその時である。
「司さん。捕まえましたよ」
 突如後ろから薫が現れしがみついてきたのだ。
「薫さん? いつの間に……ってそんな場合じゃなくて!」
 目の前にはすでに美凪が作り上げた巨大な火球があった。
「ちっ! νガン〇ムは伊達じゃない!」
 司は魔力を全開にしてこの場にある構成全ての支配を力技で奪い取った。そのため火球は消え薫の姿も完全に現れる。
 そしてそれはこの勝負の決着が付いた事も同時に示していたのだ。
 司の強大な力を目の当たりにして、薫たちは完全に戦意を喪失してしまったのだ。
 ちょっと前までは分からなかったが、今ならはっきりと司の強さが分かってしまった。自分たちなど足元にすら及ばないのだと。
 咲枝はその場に座り込み刻羽は体を震わせ、薫は司から離れ三歩程後退した。
 真夜は尊敬の眼差しを美凪は悔しそうに、司を見つめチャオランは自慢の機械が壊された事にショックを隠し切れないでいた。
 全員の様子を見て司は腰に手を当て、大きく息を吐いた。
「………ふぅ。これで最終試験は終わり、かな」
 とても満足した表情で試験の終わりを告げた。
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