お嬢様重奏曲!
 美凪と代わり司は学園の見回りをする事になった。しかも今年は念入りにチェックを行い、去年のような事がないように細心の注意を払う。
 しかし先ほどの劇の影響のせいか、劇を見ていた来客やら生徒が司を見つける度に声をかけてくる。
 無視するわけにもいかず、いちいち相手をしていたためあまり見回りどころではなかった。
「やれやれ。これじゃあまりはかどらないな」
 と一度、物影に隠れると認識阻害と重力制御で空から見回りをする事にした。
「しっかし今年も随分人が来てるんだな。ふと忘れがちだが、ここってお嬢様学校だよな? なんで一般の来客まで…ってあまり深く考えない方が身のためかもな」
 何せこの学園を所持しているのが、あの木の葉なのだ。何が起きようと不思議ではない。
「触らぬ神に祟り無しってね」
 とりあえず学園の外周を一周し、今度は内周を回ろうとした時だった。
「司! 緊急事態よ! すぐに中庭にあるステージに来てちょうだい!」
 突然、木の葉から大音声で念話が入ってきた。
「緊急事態だって? 一体何があったんですか? 事件か何かが?」
「詳しい事はこっちに来てからよ。とにかく最優先で来てちょうだい」
「分かりました。すぐに向かいます」
 念話を切ると司は上空から周囲を見渡した。
 外周だけとは言えそれらしき傾向は見当たらなかったし、不穏な動きも見かけなかった。
「とにかく行ってみるしかなさそうだな」
 どれだけ考えても答えを知らない司が、答えを導き出せるはずもなかった。
 そして何よりあの木の葉があれだけ慌てているのだから、よほど重大な事件が起こっているに違いないと判断した司は、すぐさま木の葉がいる中庭に設けられたステージへと急行した。
 今の時間、中庭のステージではブラスバンドでの演奏が行われているはずだった。
 中庭に到着すると、確かに演奏が中断され観客席からも動揺が感じられる。
 認識阻害の魔法を解除すると、周りの何人かの生徒たちが驚いていたが、今はそれに構っている時間もない。
 司は早速、木の葉の元へと向かい事情を聞く事にした。
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