お嬢様重奏曲!
 そして放課後、薫は美琴と咲枝を連れて校舎を出ていた。ちなみに司は教室で掃除していた。
 雑談しながら歩いていると、目の前に一人の少年が立っていた。その少年は顔に白い仮面を付けていた。
「……司さん?」
 仮面を付けていたので素顔は分からなかったのだが、薫にはなぜかそれが司と感じていたのだ。
「あれ? なんで私あの人を司さんだって思ったんだろう」
 言った本人も不思議そうに首を傾げていた。
「一応初めまして、と言う事かな? 僕の名前はカオスって言うんだ」
「なんやウチらになんか用なん?」
 美琴は危機感を感じ薫の前に立つ。
「美琴さんか。変わらないね。君は。薫さんも咲枝さんもこちらでは、ちゃんと魔法使いをやってるみたいだね。でもやっぱり過保護過ぎて、上達してないみたいだ」
「美琴。駄目です。気が付かないのですか? いつの間にか周囲に生徒がいなくなってます」
 咲枝の言葉に二人は周囲を見渡すと、確かに人の気配が無くなっていた。
「さすがは咲枝さんだね。人に見られると厄介だからね」
 カオスが右腕を振り上げる。すると膨大な魔力がカオスへと収束していった。
「残念だけど彼が本気になってもらうために、君達にはここで死んでもらうよ」
 指先に超高熱のプラズマボールが現れた。
「美琴! 私たちの後ろへ!」
 美琴を後ろに下がらせ薫と咲枝は、両手を前に突き出し、前方にバリアーを張る。
「そこまで出来るようになったんだ。でもそんな稚拙な結界じゃ僕の攻撃は防げないよ」
 カオスは右腕を真上へと振り上げる。するとプラズマボールはさらに大きくなっていく。それはさながら小さな太陽であった。
「僕のわがままのために死んでくれ。ゴメンね」
 カオスが右腕を振り下ろす。プラズマボールはゆっくりではあるが、その膨大な熱量によって、大気までもが焦げていた。
 その質量と熱量に美琴はおろか咲枝や薫までもが、死を覚悟した。
 そしてプラズマボールがすぐ目の前まで来たその時だった。
「御影御言が命ずる。襲い掛かる魔法よ。霧散しろ」
 横から少年の声が聞こえた途端、先程まで目の前まで迫ってきていたプラズマボールが、まるでなかったかのように目の前から一瞬で消え去ったのだった。
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