お嬢様重奏曲!
 結界が解除されると途端に周囲に生徒たちが、姿を見せ始めた。
「……ふむ。さて後の処理は彼らに任せて、私はこれで退散するとしようかね」
 眼鏡をかけ直し、御言は薫たちに背を向ける。
「え? あの、司さんたちには会わないんですか?」
 薫が御言を呼び止める。一応の礼儀としてか御言は足を止め、薫へと振り返った。
「私とて彼らに会って盛大に称賛してもらいたいのも、やまやまなのだがね。宣告も言ったように私も一応は多忙の身なものでね」
「そ、そうですか」
「そうだ。司様に会ったら伝えておいて欲しい事があるのだが構わないかね?」
「え? あ、はい。大丈夫です」
「では彼に自分が決めた守るべき者を、他人に任せるのは止めたまえ。とね」
 それだけを言うと、御言は今度こそ背を向けて立ち去って行ったのだった。
「か、変わった男の子でしたね?」
「せやな。しっかし今の会話を聞く限り、どっちが年上か分からんな」
「確かに、御言君と言いましたか。彼の方が落ち着いて、大人びてましたね」
 御言と咲枝の二人は薫を見てため息を吐いた。
「なんで二人とも私を見てがっかりしてるのよ」
「なんでもあらへん。せやけどしっかり生きていきいや」
 同情の眼差しで美琴に見つめられた薫は、むすっと不機嫌な表情を見せた。
「おーい! 三人とも無事か」
 そこへタイミングよく司が薫たちのもとへと、駆け付けた。
「遅いで? 司。あないな時は、後先考えずお姫様を助けにくるもんやろうが」
 美琴に言われ司は苦笑するしかなかった。
「悪い。念のために御言を向かわせたんだけど…咲枝さん。御言は?」
 周囲を見渡しても、本人がいなかったため、仕方なく尋ねる。
「彼はすでにいなくなってしまいました。私たちも止めたのですが」
「後、司さんに伝言を頼まれました。自分が守ると決めた者を、他人に任せるな。と」
 咲枝の言葉を継いだ薫の言葉に、司はこれまた苦笑するしかなかったのだった。
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