お嬢様重奏曲!
「やれやれ。やっと主役のご登場か。待ち侘びたよ」
 と、どこからともなくカオスの声が聞こえてきた。
「そりゃ済まなかったなカオス」
 司は驚く事なく、その視線を横へとずらした。
 すると先程まで何もなかった場所の空間が揺らぎ、そこからカオスの姿が現れた。
「全くだよ。彼がスルーしてくれなければ、台なしになっていたところだったよ」
「んで? なんの用件だ、カオス」
「随分せっかちなんだな君は。まぁいいさ。こちらも単刀直入に言わせてもらう。君と殺し合う準備が整った。これよりどちらが死ぬか競いあおうじゃないか」
 カオスが遥か上空へと舞い上がる。すると膨大な魔力がカオスから放たれた。
「彼女たちから貰った魔力だ。見るがいい!」
 カオスからおよそ一キロと及ぶ膨大な結界が、空間に展開された。
「さてこれでこちらの準備は完了だ。今すぐにでも始めたいが、それではつまらない。そちらの準備が整ったならば、仕掛けてくるがいい。こちらからはそれまで攻撃はしない」
 カオスの姿が次第に消えていく。
「待て! どうしてそこまで俺にこだわる。最強が欲しいのか!」
「最強? 興味がないね。……しかしそうだね。強いて言えば、こんな幸せな世界で生きている君が、僕は許せないから…かな?」
「どういう意味だ?」
「……さて。次に会う時は殺し合う時だ。楽しみにしているよ」
 結局、司の問いには答えずカオスは姿を完全に消したのだった。
「くそっ! 言いたい事だけ言いやがって!」
「あんなやつに言われっぱなしなんて情けないわね」
 その場でじだんだを踏む司の横に、突然美凪が現れた。
「なかなかやる奴じゃないの。久々に燃えてきたじゃない」
 その反対に木の葉も姿を現した。
「あの結界を破壊し、カオスを倒す。美凪、木の葉さん。力を貸してくれ。まずは親父を説得しなくちゃいけないからな」
 司は意気揚々と二人を見た。
「その前にあんたにはやらなきゃならない事があるでしょ?」
「下準備はしておくから、頑張りなさい、男の子」
 木の葉が司の肩を叩き、美凪と一緒に空間転位でその場から姿を消した。
「………あ」
 そして今、司の前には呆然と立ち尽くす薫が立っていたのだった。
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