お嬢様重奏曲!
 最初の一体を消滅させてから二体を消滅させたところで外はすっかり日も落ち、夜となっていた。
「こっからが本番だ」
 向こうは闇の住人。つまり夜にその力は活発化する。
「とりあえず校舎の中だな」
 外からの反応が途絶えたところで司は校舎の中へと入って行く。
 さすがに真夜中だけあって校舎の中は静まり返っていた。
 しばらく散策しているとどこからともなくクスクスと笑い声が聞こえてきた。
「アソブ? タスケテホシイ? キャハハハ」
 その声は次第に大きくなっていく。
「反応が大きいな」
 声を無視して歩いて行く。
 すると今度はラップ音が響き渡り、校舎の中に風が吹き抜ける。
「ここまで事象を操れるのか。空間への干渉率も高いな。って事はそれなりに棲み着いて時間が経ってるって事だな」
 校舎の中を歩き回りこれまで保健室の人体模型が動き出したり、音楽室で急にピアノが鳴りだしたり、トイレでは女の子の声が聞こえてきたり、他にも学校の七不思議と思われるいくつもの怪奇現象が起こった。
「なんつーかオンパレードだな。こりゃ」
 ここまでくると怖いよりも呆れて、どっと疲れが押し寄せてきた。
「さっさと片付けるに限るな」
 魔力の淀みを探りつつ歩いていると、やがて目の前に大きな鏡が見えてきた。
 魔力の淀みもそこに集中している。
「ここが当たりか?」
 鏡の前に立つとそこには暗いながらも自分の姿が映し出されている。
 それ自体はなんて事はないのだが、変化は突然訪れた。
「ヒヒヒヒ…」
 笑い声が聞こえたかと思うと、鏡に映っている自分の顔がぐにゃりと曲がり笑っていたのだ。
「サア、イコウカ」
 そして鏡の中から手を伸ばし、鏡を突き抜け司の腕を掴んだのだ。
「もらった!」
 司は鏡の中から突き出した腕を掴み、反対の手で鏡をバンッと叩き付けた。
「引きずり出してやる!」
 鏡に触れた手から魔力を解放させる。
「ナ、ナンダ! コノボウダイナチカラハ! キサマナニモノダ!」
 恐怖で震えた声が聞こえた次の瞬間、司の腕を掴んでいた向こうの腕の力が抜け鏡から切り離された。
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