お嬢様重奏曲!
 美琴の驚きにつられ薫も驚く。
「きゃゃゃゃゃゃ!!!!」
 そんな中、唯一咲枝だけが冷静な態度を見せた。
「これは司様。ご機嫌よう。こんな夜更けにいかがされたのですか?」
「ん? ちと理事長に頼まれて今日だけ巡回を」
「………ふぇ? 司、さん?」
 瞳に涙を一杯に溜め顔を見上げる。
「なんや。司かいな。驚かさんといて」
「そりゃ悪かったな。んで薫さん。そろそろ離れてもらえると、助かるんだけど」
「え?」
 薫は改めて自分の姿を見つめる。
「ご、ごめんなさい! 私ったら司さんになんて失礼を」
 顔を真っ赤にさせて一瞬で司の腕に絡めていた自分の腕を離した。
「んで? 三人こそどうしてこんな夜更けにこんなところにいるんだ?」
「薫さんが教室にノートを忘れてしまったようなので、私たちがお供したのです」
 司の質問に答えたのはやはり一番冷静な咲枝だった。
「なるほどね。分かった。だったら俺も一緒について行くよ。いくら学園の中で安全だからって、女の子だけってのは心配だからね」
「本当ですか? ありがとうございます」
「司様のご厚意。感謝します」
 二人の表情に少しだけ明るさが戻る。
「ほらっ。美琴もいつまでも座り込んでないで、早く立てよ」
「いや〜立ちたいのはやまやまなんやけどやな」
 美琴の表情に恥ずかしさが見られる。
「もしかして美琴。お前腰を」
「ええい! 皆まで言うな。傷口に塩を塗るつもりか」
「じゃあどうしましょう司さん。美琴が腰を抜かしちゃったんじゃここから動けません」
「うぅ屈辱や」
 薫の言葉が見事に美琴の心にクリーンヒットし、美琴は見えない涙を流す。
「どれ? 見せてみ」
 司は美琴の横にしゃがみ込み、腰に手を当てる。
「ってどさくさに紛れて何するねん!」
 恥ずかしさのあまり美琴は顔を真っ赤にさせ、ガバッと立ち上がった。
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