お嬢様重奏曲!
 書類に目を通す限り依頼の内容はいたってシンプルである。ただ入学式が終わるまで学園内を警備していればいいのだ。
「だけどこれなら、俺じゃなくても」
 そう司はでなくても警備員を雇えば済む話しであった。
「派遣の警備は信用出来ないのよ。それにうちの生徒はみんな政財界やらどこぞの財閥やらのご令嬢ばかりなのよ? だったらここは信用出来る人間を雇うのは当然でしょう?」
 そこまで信用されていると思うとついむず痒くなってしまう。
「とりあえず入学式は明日だからスケジュールはしっかり頭に叩き込んでおいてね? 後、当日はちゃんとスーツ着てこの警備員用のプラカードを付ける事。そうじゃなかったら門前払いだから気をつけるのよ?」
「…………分かったよ」
「よろしい! じゃあ報酬金はその書類に記載されている額を口座に振り込んでおくわね」
「分かりました」
 司は渡された書類を一緒に渡された封筒の中にしまいこむ。
「今日はホテルを取ってあるからそこで休みなさい。これは仕事とは関係なく、私個人としてのお礼よ」
 テーブルの上に置かれた鍵を受け取る。
「なんかありがとう」
「良いのよ。これから長い付き合いになるんだから」
 この言葉は仕事の関係でと思っていたが、それは勘違いだと後で思い知らされる事になる。
 そして入学式当日がやってきた。
言われた通りスーツとプラカードを身につけ、学園内をパトロールして行く。
 パトロールをしているとどうにも視線が気になってしょうがなかった。
 誰もが通り過ぎる度になにやらヒソヒソと囁きあっている。
 まぁお嬢様学校に男がいるのだから当然と言えば当然なのだが。
「まっなんにせよ、今日限りだろうし我慢我慢っと。それよりも魔法使いってばれないようにしないとな」
 自分がとても場違いなのでは? と思いつつパトロールを続ける。
 最初は女の子だらけで嬉しいと思っていたが、時間が経つにつれどうにも居づらくなってきた。
「これは俺だけ異物だからか?」
 等と呟いているともうすぐ入学式が始まろうと言う時間にも関わらず、道の端で屈み込み足を押さえている女子生徒がいた。
「もしか怪我でもしてるのか?」
 とりあえず司はその女子生徒の側に駆け寄って行ったのだった。
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