お嬢様重奏曲!
「んじゃ俺、見回り戻るな」
 定時連絡を済ませた司は二人に別れを告げ、再び見回りに戻った。
 今度は琉菜と茜の姿を発見した。
「珍しいツーショットですね?」
 司から声をかける。すると二人は司の存在に気付き、振り返る。
「あら? 司君じゃない。お仕事ご苦労様」
「御影か。ご機嫌よう」
 琉菜はゴージャスに、茜はシックなドレスを着ていた。
「別に珍しい事もないわよ? 私と茜は昔からの親友だし」
「こんな仕事を任せられるのだから、それなりの腕があるのだろう。なぜ私と手合わせしない」
「もうまた言ってる。ごめんね? 司君と会ってからこればっかりなのよ」
「………はぁ」
「剣士として強者との戦いを望むのは当然だと思うのだが?」
「はいはい。分かった分かった」
 琉菜が強引に話を打ち切る。
「司君だってまだ仕事があるんだから」
「それは分かっている」
「だったら司君を困らせないの。茜は私が相手しておくから、司君は仕事を続けてちょうだい」
「分かりました。それじゃこれで」
「うん。ご機嫌よう」
「…ご機嫌よう」
 苦笑してる琉菜と不満げな茜を残し、見回りに戻る。
「Dー1からキングへ。ただいま中庭の隅でセレスティア学園にて、はぐれた生徒を発見しました」
「え? はぐれた?」
「はい。聞くところによると、気が付けばここにいたと」
「なるほどね。分かりました。すぐ行きます」
 司はすぐにその生徒が誰か分かった。セレスティア学園でここまで天才的な方向音痴は、多分一人しかいないだろう。
 中庭に到着すると連絡してきた警備員と、司の存在に気付き安心した表情を見せる生徒がいた。
「手間をかけさせてすみません。後は俺が彼女の身柄を引き継ぎますので」
「そうですか。助かります」
 相手は子供と言えど大富豪の令嬢なのだ。
 警備員の表情にも安堵が伺える。
 警備員が自分の持ち場に戻ったのを確認すると、自分の隣にチョコンと立っている和服少女を見る。
「……さて、会場に戻ろうか? 咲枝さん」
「お手を煩わせてすみません。司様」
 恥ずかしさから顔を俯かせていたが、顔を朱くさせているのが分かる。
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