お嬢様重奏曲!
「うぅ〜。私ってそういうイメージなのかな? 後で問い詰めてやる」
「…ははは。まぁほどほどにね」
「でも司君に可愛いって言われたのは嫌じゃなかったよ」
「そりゃどうも」
「むぅ。もしかして信じてないなぁ」
 子供っぽく頬を膨らますところは、確かに可愛い。
「いーもーん。どうせ私は子供だよ」
「そんな拗ねなくても」
「拗ねてないもん。拗ねてるって言う人が拗ねてるんだよ」
 なんともまさに子供っぽいセリフではあるが、ここで下手にツッコミを入れれば事態は悪くなるに違いない。
 そう判断した司は早々に話を切り上げる事にした。
「そんじゃ俺まだ用事あるから」
 半ば強引に話を打ち切り刻羽の前から立ち去る。
「ってこらぁ! 司君どこ行くぅ!」
 騒ぐ刻羽を周囲にいまクラスメートに取り押さえられるのを、横目で確認しつ司は見回りを続行させた。
「さて。ここらで少し一息入れるか」
 人垣から少し離れ司は椅子に座り込む。
 ただし魔法で会場全体をチェックするのは忘れない。
「お仕事、お疲れ様です。御影さん」
 顔を上げると目の前に桜子が立っていた。
「喉が渇いたでしょ? これを」
「ん。サンキュー、幸路さん」
 桜子からグラスを受け取ると、一気にグラスを空にさせる。
「よほど喉が渇いていらしたようですわね? では今代わりを」
「あ〜。いやいいよ。ありがとう」
「そうですか? でしたらよろしいですけど」
 桜子はドレスと言うよりもスーツっぽい服装だった。
「みんな自分の特徴を掴んでるんだなぁ」
「何のお話ですか?」
「え? あ〜独り言だから、気にしないで」
「フフッ。おかしな人ですね? 御影さんは」
「そうか?」
「ええ。皆さん口を揃えて。神楽さんや特に桜塚さんが」
「……美琴め。後でシバく」
「そういえば御影さんは女性に人気があるのですね?」
「いやいや。んな事はねーし」
「あら? ご存知ありませんの? 先程からあちらの学校の女子生徒さんたちは、あなたの事を気にしてましてよ?」
 薫や美琴のみならず桜子にまで言われるのだから、本当の事なのだろう。
 これからはもう少し自分に自信を持とうと思う司であった。
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