お嬢様重奏曲!
第八章 女剣士司参上!
 いつものように薫と美琴に出迎えられ、司は寮の部屋を出る。
「それにしても司さんって実はとても凄い人だったんですね?」
「せやな? あのポテンシャルやらスキルは、連邦の白い悪魔かぁ! って感じやったからな」
「俺はガン〇ムか」
「え? 白い? ガン…何ですか? それ」
 一人分からない薫を置いて話を進める。
「実は司は完璧超人とちゃうか」
「んなわけねーよ。たまたまさ」
「でもダンスも凄い上手でした」
「別に自慢出来るほどじゃないって……っ!」
 一階の談話室に来ると司は何かを感じ取り、周囲を見渡す。
「まずい! 薫さん、緊急事態だ」
「ふぇ? 緊急事態って何ですか?」
「とにかく背中貸して」
 薫に有無を言わさず、薫の背中にさっと隠れる。
 そして自分はまるで薫の影だと言うかのように、ただ息を潜め背中に隠れる。
「……はは〜ん。そゆ事か」
 何かを察した美琴は司を見てため息を吐く。
「どういう事? 美琴」
「なんや。あれ見てみぃ薫」
 美琴があごで指す方を薫は見る。
「あれってもしかして琴崎先輩? どうして一年生の寮にいるんだろう?」
 首を傾げる薫を見て美琴は呆れていた。
「それほんまに言うてるん? 薫。司を探して来たに決まってるやんか」
「司さんを?」
「せや。いつぞやのどっちが強いか、ってやつ」
「あ〜あれ」
 ようやく思い出したようで、手をポンと叩く。
「だったらお相手してあげれば済む事じゃないですか…ハグッ」
 後ろに振り返りそうになった薫の首を司は強引に戻す。
「俺は始めっから、負けると決まってる勝負をするつもりはない」
 微妙な力加減で薫を歩かせる。
「何小さい事言うてん。男やろ?」
「うるさいなぁ。そういう事は正面きって対峙してから言え」
 茜に見つからないように薫の体を反転させ、後ろ向きで歩かせる。
「相手は剣道家だぞ? 勝負だって自ずと剣道になる。相手の土俵で勝てる相手じゃないんだよ。琴崎先輩は」
 どうにか寮を抜けたところで司は薫から離れる。
「ふぅ〜。紙一重だったぜ」
「なにがやねん!」
 汗を拭う仕草を見せる司に美琴は鋭いツッコミを入れた。
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