お嬢様重奏曲!
 父親に報告した結果、当然のように了承してくれた。しかも、
「男なら襲い掛かって行け! 俺が許す!」
 とまで言ってくる始末である。はっきり言って子を持つ親とは思えない発言である。
「さてっと。後は向こう次第か」
 司は半ば楽しみにしつ眠りに就いた。
 そして翌日。
「司さーん。起きてますか?」
 いつものように、薫が迎えに来る。
「ちょっと待ってて。今行くから」
 支度を済ませドアを開けると薫と美琴のいつものメンバーに加えて、咲枝の姿もあった。
「おはよう。薫さん。美琴。咲枝さん」
「おはようございます司さん」
「おはようさん。司」
「おはようございます司様」
 それぞれ挨拶を済ませ寮を出る。
「んで? 早速だけど報告の結果を聞かせてくれるかな?」
「ウチんとこは御影の名前を出したら一発オーケーや」
「私も司様の名前を出したところ了承を頂きました」
「私のところも了承してもらえたのですが…」
 何か言い辛いのかチラチラと司を見る。
「?」
「家に司さんのお父様から電話があって。それまで渋っていたお父様が電話を受けてから、許してくれたんです」
「あ、それウチもや。なんや偉いおとんの表情が変わったのを覚えてる」
「私の家にもです。御影が付いているならと、快く了承してくださいました」
「…あんのクソ親父」
 司は思わず頭を抱えそうになったが、ぐっと自制する。
「ま、まあ。俺の親父な事はともかくとしてだ。三人一緒に行けて良かったじゃん?」
「それは違いますよ。司様」
「そやそや」
「へ? 何が」
「三人ではなく、四人ですよ? 司さん」
「……ありがとう」
 司の存在がすでに三人の中で確立されている事に、少しだけ感激した。
「それにや。一番司を推してたんは薫やしな?」
「ちょ。美琴!」
 悪戯っぽく笑う美琴に耳まで真っ赤にさせながら、薫は怒鳴り付けた。
「恥ずかしがる事はないと思いますよ? 司様は確かに素敵な殿方ですから」
 意外にも咲枝からこんな発言が出た事に美琴は驚いた。
「おっと! これはライバル発言ってやつか? …まぁ確かに司はそこら辺の男なんかとは、レベルがダンチやしな」
 美琴が素直に咲枝の言葉に納得していた。
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