お嬢様重奏曲!
「も、もう。美琴も咲枝さんも何を言ってるんですか」
 すでに薫は頭から湯気が出る寸前だった。
 話題の当人である司は平然と涼しい表情をしていた。
「それはいいとして、名目上は護衛って事になってるからさ? 後で自宅の電話番号教えて。一応俺の方から、両親に報告しなくちゃいけないからさ」
「分かりました」
「変な事に使ったら怒るで?」
「承知しました」
 三人がそれぞれ頷く。
「御影様。少しよろしいでしょうか? 私たちでは重たくて持てなくて」
 二、三人の生徒が司の側に駆け寄る。
 この間の剣道部の試合をきっかけに全校生徒の間で、司に対する評価がぐっと上がった。
 そのため、ここ最近となって以前より気軽に声をかけてくるようになったし、今のように何かと頼ってくる回数が増えてきた。
「ああ。いいぜ。んじゃ三人とも、続きは教室でな」
 と司は生徒たちと一緒に三人から離れて行った。
「司ってほんま何者なんやろな? ウチらの家は大富豪なんやで? 政財界にまで影響を与えれるっちゅうのに、司の親父さんの言葉に従うなんておかしない?」
「実は司様のご実家は私たちより比べられないもの、かも知れませんね」
「確かにせやな? 理事長かてただ者やあらへんしな」
「そして司さんはそんなお家を継ぐ次期当主、なんですよね?」
 薫の言葉に薫を含めた三人は司が消えていった方をただじっと見つめたのだった。
 そして昼休み、また四人は一緒に食堂にいた。
「ん? 俺の実家? ははは。そんな大それたもんじゃないさ。俺ん家より薫さんたちの方が、全然凄いじゃん」
 今朝の疑問を司にぶつけてみると、司は笑って返した。
「せやけど、そんなウチらの両親を説得出来るんは相当なものやと思うんけど?」
「たまたま知り合いだっただけなんじゃねえの? 俺の家はしがない護衛屋だぜ? 家だって美琴の実家よりかなり小さいしよ」
「まっ、物は言い様ね」
 背中から声が聞こえ振り返るとそこには琉菜が立っていた。
「ふなはん?」
「こらっ! スプーンをくわえたまま喋るなんてマナーが悪いわよ」
 人差し指で司の額を軽く小突き注意した。
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