お嬢様重奏曲!
「まっそんな事は別にいいんだけど。それよか悩みってのは?」
「それは…その」
 言い辛い事なのか薫は司の顔をチラチラと見ながら、言葉を濁す。
 そんな薫の仕草を見て司は何かを感付いた。
「なぁ? 薫さん。もしかして今回俺が護衛を引き受けたのを気にしてるんじゃないか? きっと迷惑だったんだろうな、みたいなさ?」
「っ!」
 どうやら図星だったらしい。薫が目を丸くさせている。
「あのねぇ? 俺だって仕事はちゃんと選ぶし、今回は別に仕事とは思ってないし」
「ですけど」
 どうにも薫が食い下がってくる。
 薫は意外と頑固らしい。
「じゃあこうしよう。薫さんはどうしたい?」
「私、ですか? 私は」
 一度口を閉ざすが、しばらくしてゆっくりと開かれる。
「司さんと…皆と一緒がいいです」
「そっか。良かった。これでもし俺を外されたら、どうしようかと思ったよ」
「そんな! 私は司さんと…っ!」
 口が滑ったのか、顔を赤くさせ慌てて口を塞いでいた。
「ならそれでいいじゃんさ?」
「でも…」
「おっと。でもは無しだぜ? 薫さんはもっと自分に素直になるべきだ。迷惑てかあんまし気にしない方がいい。人間そこにいるだけで、迷惑になる事だってあるんだし。分かったら返事は?」
「でもそれでは」
「……………」
 司は無言を貫く。
「……分かりました。司さんの言う通りにします」
 先に薫が折れ、軍配は司に上げられた。
「んじゃこの話はこれで終わり。いいね?」
「…はい」
 諦めた様子で薫は頷く。
「大丈夫。なんとかなるさ。何かあったら俺が守ってやるからさ」
「はい。お願いします…あれ? この紅茶美味しい」
 口が渇いた薫はそこで初めて紅茶を口にして、驚いていた。
「だろ? 前に食堂から少しだけくすねてきたやつだからな」
「あ〜! どうりでどこかで飲んだ気がしたと思ったんです。いけないんですよ?」
「だから黙っててくれよ? それ飲んだから薫さんも同犯なんだから」
「えぇ! それずるいです!」
「だからこれは二人だけの秘密な?」
「もう。分かりました」
 頬を膨らませる今の薫には最初の陰りはなくなっていた。
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