お嬢様重奏曲！

　いよいよゴールデンウイークがやってきた。
　司を除く三人は一度実家に戻り支度を済ませる事になった。
　そして三人と合流した司は三人の荷物を見て驚いた。
　三人が三人ともかなり大きなトランクケースを二つほど引きずって来たのだ。
　対して司はリュックサックを一つ、背中に背負っているだけである。
「……何だよ？　その荷物は」
「すみません。これでも結構減らした方なんですけど」
　顔を赤くさせなぜか謝る薫。
「司様はそれだけなのですか？」
　逆に首を傾げ尋ねてくる咲枝。
「女の子はやな？　男と違うて色々と物入りなんやで！」
　なぜか逆ギレしてくる美琴。
「ま、まあ。無事三人揃ったし、んじゃ薫さんの別荘に向かうとしましょうか」
「せやな？　送迎はウチが手配したバスがあるから、それで行こうか」
「ん。気が利いていてよろしい。だったら三人とも先に乗ってろよ。荷物は俺が運んでおくから」
「いえ。それくらい私も手伝います」
「……薫さん」
　薫が身を乗り出したところを司が牽制する。
　すると薫は素直に引き下がった。
「ふふ〜ん？」
　何やら美琴が悪そうな笑みを浮かべていたが、今はとりあえず見なかった事にして、司は三人の荷物をバスの中へと運んでいった。
「うわ〜さすがは金持ちだなぁ」
　目的地に着いて司の開口一番がこれだった。
「あのな？　司。この場合、景色に感動するもんと違いか？」
　美琴の言葉は確かなのだが、見渡す限りの平原や山々が、神楽財閥の土地なのだから、庶民の司が驚くのは仕方がない。
「あそこの湖畔の側にあるコテージが、私たちが泊まる場所です」
　薫が指差した場所には確かにコテージがあったが、立派な一戸建てばりほどの大きさだった。
「おいおい。こっからあの大きさって。相対距離から考えて小屋ってレベルじゃねえぞ」
　住む世界の違いを叩き付けられ、もはや司は戦意喪失していたのだった。
「……とにかく、コテージに行こうか」
　心の中でシクシクと涙を流しながら、バスはコテージへと向かっていった。